尼崎の池田司法書士事務所 代表司法書士の池田です。
今回のテーマはマニアックな「成年後見人の印鑑証明書」についてです。
一般の方には全く関係ない話ですが、職務の備忘録として。
私は成年後見業務も多くしているのですが、その業務の中で被後見人(ご本人)の方がご所有の不動産を売却することもあります。
例えば、自宅で暮らすことが難しくなり、施設に入所することになったが、自宅が空家になり、売却して施設費に充てたい。というような場合などです。
不動産の売買取引を行う時、名義を買主様に変える「登記」という手続きがあります。
その登記手続きの時に、売主は印鑑証明書を添付しないといけません。
成年後見人が売買をする場合は、成年後見人の印鑑証明書を添付します。要するに「私」の印鑑証明書を添付するのです。
では、私の印鑑証明書って何?という問題が出てきます。
登記申請書の添付書類である印鑑証明書は、原則として市区町村長又は登記官が作成するものに限られます(不動産登記令16条2項)。
印鑑証明書は、市町村が発効するものですので、印鑑証明書の住所は「自宅」の住所が記載されています。
しかし、成年後見人の資格を証明する登記事項証明書には専門職後見人だと自宅ではなく「事務所」の住所を通常載せているので、資格を証明する登記事項証明書と、市町村の発行する印鑑証明書では記載されている住所が違うので同一性が判断できないのです。
そこで、登記事項証明書と個人の印鑑証明書の人物が同一であることを証明するため、日本司法書士会連合会が発効する登録事項証明書がさらに必要になります。
この登録事項証明書を取得するには、所属する会に請求して・・・・会から連合会に請求して・・・・という手続きになるので結構時間がかかります。
そこで、平成30年1月1日より専門職後見人が届け出た印鑑(職印)に関する裁判所書記官による専門職後見人等の印鑑証明書発行が行われることになりました。
不動産登記令16条2項の例外として、
「裁判所によって選任された者がその職務上行う申請の申請書に押印した印鑑に関する証明書であって、裁判所書記官が最高裁判所規則で定めるところにより作成したものが添付されている場合」と定められています(不動産登記規則48条1項3号)
裁判所書記官が発行する印鑑証明書が使えるのです!
裁判所書記官が発行する後見人等の印鑑証明書はこの例外規定にあたるわけです。
裁判所書記官の作成する印鑑証明書は、事務所所在地が記載されているので、この印鑑証明書と登記事項証明書があればバッチリOKです。
ものすごくマニアックな話でした。以上